高度プロフェッショナル制度の趣旨
高度プロフェッショナル制度は、自律的で創造的な働き方を希望する方々が、高い収入を確保しながら、メリハリのある働き方をできるよう、本人の希望に応じた自由な働き方ができる選択肢として、2019年4月より働き方改革関連法の一環として施行されました。
高度プロフェッショナル制度は、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。
労使双方のメリットと本人同意原則に基づき、個別労使間交渉を通じて結ばれる雇用契約 「頑張って(長く)働くことが評価される」から「時間内で(短く)終わることが評価される」ようになることを狙いとしています。
生産性を自己管理できる真のプロフェッショナル 仕事のやり方を工夫しで生産性をあげられる人にふさわしい制度で、成果目標、評価基準の明確化が求められます。
高い専門性(対象専門分野での豊富な知識・能力・実績・経験)や希少性を測る物差しも適用要件に加えるべきでしょう。また、高プロ対象者は、自由裁量で働く人ですから、オートノミ―(autonomy)の利く人でないと難しいでしょう。つまり、自治・自主・自立・自己責任のもとで、自分でどんどん動いて成果を上げる人です。従って、こうした自己管理能力も適用要件に加える必要があるでしょう。
高度プロフェッショナル制度の要件、手続きには、厳しいものがあるので、まだ実際の適用例は少ないといわれていますが、アメリカの「ホワイトカラー・エクゼンプション」(White Collar Exemption) に近い制度として、今後活用が進むものと思われます。
高度プロフェッショナル制度の要件
・対象業務
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
- 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
- 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
- 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務
•年収要件
「対象年収は1075万円以上」とする
•手続き要件
- 「労使委員会」を設置する。
① 委員の半数については、過半数労働組合がある場合には過半数労働組合が、過半数労働組合 がない場合には過半数代表者が任期を定めて指名すること。
② 委員会の議事録が作成され、保存されるとともに、労働者に周知が図られていること。
③ ①②のほか、厚生労働省令で定める要件 - 労使委員会で決議をする。
①対象業務
②対象労働者の範囲
③対象労働者の健康管理時間を把握すること及びその把握方法
④対象労働者に年間104日以上、かつ、4週4日以上の休日を与えること。
⑤対象労働者の健康確保措置: :( インターバル確保・深夜業制限、 ( 1か月又は3か月の健康管理時間の上限措置、 ( 2週間連続の休日、 (臨時の健康診断、のいずれかを選択
⑥対象労働者の健康管理時間の状況に応じた健康確保措置:厚生労働 省令で定めるものから選択 - 決議を労働基準監督署 に届け出る。
- 制度導入後
要件に該当する者に面接指導を行う。
事業者は、健康管理時間が厚生労働省令で定める時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導を行う。
•本人同意要件
対象労働者の同意を 書面で得る。
高度プロフェッショナル制度の効果ー 他の労働時間制度との比較(内容別の規制の有無)
(スマホの場合、画面を横にしてご覧ください)
規制内容 | 労基法 | 一般労働者 | 裁量労働制 | 管理監督者 | 高度プロフェッショナル |
労働時間 | 32条 | あり | みなし | なし | なし |
休日 | 35条 | あり | あり | なし | なし* |
時間外割増賃金 | 37条 | あり | 一部あり | なし | なし |
休日割増賃金 | あり | あり | なし | なし | |
深夜割増賃金 | あり | あり | あり | なし | |
休憩 | 34条 | あり | あり | なし | なし |
年次有給休暇 | 39条 | あり | あり | あり | あり |
独自の健康確保措置 | あり | なし | あり | ||
本人同意 | 企画型は要 | 要 |
*高度プロフェッショナルの休日は、年間104日が絶対条件、かつ4週4日以上必要。
これは、一般労働者の法定休日の2倍の数字であることに注意!
参考資料
厚生労働省発行