パートタイマー就業規則

パートタイマー労働者の増加
総務省の発表によると、パート労働者数は、平成17年には1,266万人に達し、非農林雇用者中に占める割合は24%と、約20年前の昭和55年の10%から大きく上昇しています。 また、女性雇用者中パート労働者の占める割合は40%、男性雇用者中パート労働者の占める割合は12%に達しています。 このように、パートタイム労働者の企業にとっての役割は増大しており、正社員との待遇の違いが社会問題にもなってきています。
パートタイマー就業規則がない場合のリスク
  1. 労基法の規定により、従業員が10人以上の場合就業規則は、全ての従業員について作成しなければなりません。パートタイマー用の就業規則がなければ、就業規則が適用されない従業員が存在することになり、労基法第89条の就業規則の作成義務に違反することになってしまいます。
  2. パート労働者自身も雇用形態、勤務条件などに違いがあり、正社員でないことを承知し、その違いを認識しながら雇用されたはずで、実務上は効力が及ばないと考えるのが自然ですが、次のような「形式的な解釈」の余地を生じかねないとされています。
  3. パートタイム労働者の就業規則が作成されていない場合、正社員の就業規則が唯一の就業規則となり、パートタイム労働者については個別労働契約による旨の取り決めをしても、「労基法93条が適用されてしまう余地」が生じ、会社にとっては思いがけないリスクとなって現れる場合が考えられます。 労基法第93条 「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による」
  4. 上記のような「形式的な解釈」の余地をなくし、勤務条件・待遇の違いをあらかじめ明確にしておくためにもパートタイマー就業規則を作成しておくことが、重要になってきます。
パートタイム労働法の改正の影響
少子高齢化、労働力人口減少社会で、パート労働者が能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、 パートタイム労働法 が改正され平成20年4月1日施行されます。 改正の詳細は今後の政省令の制定に待たれますが、基本的には、パート労働者の労働条件・待遇をを文書などで明確に通知する義務、実質的に契約期間の定めがなくなった「正社員と同視すべきパート労働者」の待遇を差別的に取り扱うことの禁止、また正社員への転換を推進するための措置の義務化などの内容となります。 この改正法の施行により、今後一層、パートタイマーの処遇に関する関心が高まってくることが予想され、事業主も労働条件の明確化などの対応策としてパートタイマー就業規則を整備することを迫られてくるでしょう。
パートタイム就業規則の作成法
上記のようなリスクに備え、常態としてパート労働者を一人でも雇用する場合は専用のパートタイム就業規則を作成しましょう。
  1. パートタイム労働者だけに適用する条項のほかは、すでに作成されている正社員の就業規則を準用する方法 この方法は、就業規則そのものが読みにくくなるのと、メンテナンスを誤ると、正社員の条項が思いがけなく適用されてしまう危険性があります。 またパートタイマーに正社員の待遇を公開することになってしまいます。
  2. パートタイム労働者に適用する別の就業規則を作成する方法 この方法は、パートタイム労働者だけに適用する独立した就業規則を別途作成するもので、全条項について明確に記述します。 まず、正社員用の就業規則をコピーし、各条文を1つ1つみて、パートタイマーの実態に合わせて規定を削除・修正します。 パートタイマーには適用しない項目(特別休暇、休職、退職金など)は削除して、労働条件が異なる項目(年次有給休暇、出退勤の時間や賃金の構成など)を修正すれば、パートタイマー用の就業規則が完成します。
  3. 意見聴取および届出 作成したら、正社員就業規則と同様に、従業員代表の意見を聴き、監督署に届け出る必要があります。